創業社長のための役員報酬決め方ガイド

創業社長向け・経営判断ガイド 税額・手取り・資金繰りを同時に考える実務解説
創業間もない時期は、売上の見通しが立たず、役員報酬をいくらにすべきか悩むものです。
しかし、役員報酬は一度決めると原則として1年間変更できません。
本ガイドでは、税務上のルールを守りつつ、会社と個人の手取りバランスを最適化するためのポイントを図解で解説します。

1. 損金算入できる「役員報酬」の基本3類型

法人税法上、役員報酬を経費(損金)にするためには、以下の3つのルールのいずれかを満たす必要があります。創業期の実務では、基本的に「定期同額給与」を選択することになります。
📅 ① 定期同額給与 毎月決まった時期に同額を支払う方法。
創業期の基本形。
📝 ② 事前確定届出給与 事前に税務署へ「いつ・いくら払うか」を届け出て支払う方法。
いわゆる役員賞与
📈 ③ 業績連動給与 利益などの指標に連動する給与。
要件が厳しく中小企業は原則対象外

2. 定期同額給与の「3ヶ月ルール」に注意

役員報酬の金額を決める・変更することができるのは、原則として事業年度開始の日から3ヶ月以内に限られます。これを過ぎてからの変更は認められません。
事業年度開始
(設立日)
〜3ヶ月以内〜
金額決定・変更OK
4ヶ月目以降
変更NG
⚠️ これ以降に変更すると、原則として経費として認められません!

3. 役員報酬の最適額の決め方

「生活費」と「会社の資金繰り」の両面から検討するステップが重要です。
1
毎月の生活費を把握する
住宅ローン、教育費など個人の最低必要額を算出
2
会社が支払える額を確認する
売上予測 − 経費 = 支払可能原資
3
税金・社会保険の概算で手取りを試算
額面だけでなく手取り額で生活できるかチェック
4
会社に残す運転資金を確保する
納税資金や不測の事態に備える内部留保
5
毎月一定額に設定する
決定後は議事録を作成して保存

4. 報酬額と税負担のバランス比較

役員報酬を高くするか低くするかで、税金の支払先(法人税か所得税か)と手元資金の残り場所が変わります。
項目 低め設定 標準設定 高め設定
役員報酬/月(例) 20万円 50万円 100万円
個人の所得税・住民税 少ない 中程度 多い
社会保険料(会社+個人) 少ない 中程度 多い
法人の課税所得 増える 中程度 減る
法人税 多い 中程度 少ない
会社の手元資金 多い 中程度 少ない
💡 創業期は資金繰り優先のため『低め〜標準』設定を推奨します

5. 「事前確定届出給与」を使う場合の期限

役員賞与を出したい場合は、事前の届出が必須です。1日でも遅れると全額損金不算入になります。
🗓️

届出期限(デッドライン)

会計期間開始後 4ヶ月以内

または

株主総会決議後 1ヶ月以内

※どちらか早い方が期限となります

(新設法人の場合は設立後 2か月以内

6. 要注意!「経済的利益」のみなし給与

現金で支給していなくても、以下のようなケースは「実質的な給与」とみなされ、課税対象になるリスクがあります。
社宅家賃の不適切な設定:会社から極端に低い家賃(または無償)で社長が家を借りている場合
個人的な保険料の会社負担:社長個人の生命保険料を会社経費で支払っている場合
低利・無利息の貸付:会社から社長へ利息を取らずにお金を貸している場合(利息相当額が給与認定)
私的な経費の付回し:家族旅行や個人的な食事代を交際費等で処理している場合

7. 創業期によくある失敗パターン

  • ①「とりあえず高く取って後で調整すればいい」
    → 期中の減額は原則認められず、過大納付や資金ショートの原因になります。
  • ②「資金繰りが苦しくなったから期の途中で減額した」
    → 「定期同額」の要件から外れ、減額前の金額との差額などが損金不算入になるリスクがあります。
  • ③「利益が出たから決算前に増額した」
    → 典型的な租税回避行為とみなされ、増額分は全額損金として認められません。

8. 決定前の最終チェックリスト

役員報酬を決定する前に、以下の項目を必ず確認してください。
  • 毎月の生活費を具体的に計算した
  • 今期の売上・利益の見込みを試算した(保守的に)
  • 社会保険料の会社負担分を含めた総コストを確認した
  • 資金繰りが悪化しても、毎月同額で支払い続けられる金額か
  • 事業年度開始から3ヶ月以内に金額を確定した
  • 事前確定届出給与を使う場合、届出期限を確認した
  • 社宅など「経済的利益」になるものがないか税理士に確認した